「ドリーミン康一」(5部)

チョイ悪おやじの承太郎だ。
先月、イタリアにバイトに行かせた広瀬康一。

 ・・・くん。

クールで、強くて、欠点のないところが欠点と噂…
…の、俺の事を崇拝してくれているし、

この前のイタリア旅行の費用が俺のポケットから出ていると思ってるので、
お土産もいっぱい買ってきてくれたし、やたら感謝してくれているし、

ナントカactで適当に敵もやっつけてくれるし、
小柄だから小さな道でも小回りが利くし、
簡単によけ合いも出来るし…

とにかく、従順で何かと便利… …イイコだ。

そんな彼が、最近進路を考え始めたらしい。

…マズい…。

こんな使えるコマ・・・ デキるコを、
そこらの一般企業に就職させるのは勿体無い。
それより俺の近くにおいて、便利に使って面倒なことはお任せ…
色んな事を勉強させた方がいいと思う。

こうしてはおれぬ。
すぐに行って…じゃなくて、来させて、ちと止めなくては。

まぁ、すぐにねじ伏せ… 説き伏せることは容易だろう。
俺の魅力の前には、何者も無力だ。

さっそく、電話代はスピードワゴン財団が払ってくれている
固定電話で、呼びつけよう。

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…20分後…

--コンコン--

「承太郎さん、僕です。康一です。」

「あぁ、入ってくれたまえ」

「あの、お話しって… ちょっと僕、急いでるんですけど…」

「まぁ、立って話すのもなんだろう。
その座り心地のいい北欧製ソファに座ってくれ。
いや、急に呼びつけて悪かったね。
君の就活の話をジョウスケから聞いてね…」

「え?もしかして、心配してくれてたんですか?」

「いや、君の事だから、心配はしてないがね…
もし何か力になれそうな事があったら…」

「じょ…承太郎さん…」

「ははは。大げさだな。そんな涙をためて…」

「こんな僕のことを心配してくれて、嬉しいんです…。
…でも、僕 大丈夫ですから!この前イタリアに行って、
やりたいことが見つかったんです!!
この広瀬康一には夢があるんです!」

「・・・…・・・夢・・・?」

「この前会った、ジョルノ君みたいになりたい…」

「…え?なに?は…?」

「ギャングスターになりたいんです!」

「ぎゃ・・・?」

「じゃあ、承太郎さん!僕、このままイタリアに行ってきます!
僕の就活は、イタリアにあり!
…行ってきまぁす!」

去っていく彼の背中を見ながら、俺はディオに勝って、
ジョルノに負けた気がしました…